1. 事業の目的
研究者長期派遣は、「平成19 年度 国際共同研究事業研究支援分野」の新事業としてスタートしました。この事業では大学名誉教授あるいは企業のベテラン研究者を、主要産油国の大学・研究機関に長期的に派遣し、相手研究者を指導するとともに、研究手法の改善、新しい研究テーマへの取り組みを進めるなど、相手機関の研究活動の高度化・活性化などを図ります。併せて研究分野の人的交流を促進して、産油国の我が国に対する信頼感の醸成・向上につなげることを目的としています。
2. 事業の実施状況
平成19 年度は事業開始の年であり、5 月から10月の準備期間を経て、実際には11 月から2 月までの期間で、2 人の研究者をサウジアラビアのキングファハド石油鉱物資源大学(KFUPM)と、クウェートの科学研究所(KISR)の2 機関に派遣しました。過去15 年以上にわたって国際共同研究事業、基盤整備事業及び定期シンポジウム等を共同実施してきた技術協力分野で、深い関係のあるこれらの2 機関を研究者の派遣先としました。
平成20 年度においては、19 年度に引き続いてKFUPM 及びKISR に、合計で3 人の研究者を派遣しました。2ヵ年にわたる派遣の概要は、次のとおりです。
< KFUPM への研究者派遣>
● 派遣研究者
北海道大学 服部 英(ひでし) 名誉教授
● 派遣期間
平成19 年11 月~ 平成20 年2 月の期間内に3ヶ月間KFUPM に滞在
平成20 年6 月~平成21 年2 月の期間内に3ヶ月間KFUPM に滞在
● 研究支援内容 触媒研究に関する新規の研究テーマの導入と指導
(1)ジルコニア系の固体酸触媒による多分岐アルカンを主成分とするクリーンガソリンの製造と触媒作用機構
の解明
(2)固体塩基触媒による高付加価値芳香族成分の製造と触媒作用機構の解明

服部 英 北海道名誉教授(中央)、KFUPMにて
< KISR への研究者派遣>
● 派遣研究者
日揮触媒化成㈱ 東 英博 博士
● 派遣期間
平成19 年11 月~平成20 年2 月の期間内に3ヶ月間KISR に滞在
平成20 年5 月~ 11 月の期間内に3ヶ月間KISRに滞在
● 研究支援内容
触媒研究手法の改善及び製油所操業改善の研究
(1) 直脱触媒等のパイロット試験評価性能向上のための調査と指導
(2) KNPC 直脱装置の操業改善のためのコールド フローモデル実験の実施・解析
● 派遣研究者
鹿児島大学 高橋 武重 名誉教授
● 派遣期間
平成20 年10 月~平成21 年2 月の期間に2.5ヶ月間KISR に滞在
● 研究支援内容
触媒研究に関する講演会開催と研究者個別指導
(1) 常圧残渣油の水素化脱硫触媒の活性劣化機構及び劣化防止に関する講演会開催
(2) 個別相談・指導:個別研究内容、若手研究者育成、研究方針等

東 英博 博士(手前)、KISRにて

高橋 武重 鹿児島大学名誉教授、KISRにて
3. まとめ
研究者長期派遣事業では、2 年間にわたり3 人の研究者が、サウジアラビアのKFUPM 及びクウェートのKISR に現地滞在し、研究の支援・指導活動を実施しました。現地が酷暑となる夏期や、イスラム教の断食月等の派遣は避けましたが、研究者の方々には、気候の厳しさや習慣・生活環境の違いを乗り越えて、派遣先機関の研究者との交流を深め、現地の状況を見定めながら支援活動を進めてもらいました。新規の研究テーマの立上げ、研究手法の改善、講演及び個別指導など、研究者が比較的長期にわたって現地に滞在することにより、可能となる多様な分野の活動を通じて、相手機関の研究者及び研究内容の向上に貢献してもらいました。相手機関からは、正に人的な支援であるこの事業に対して、非常に高い評価が寄せられています。
平成21 年3 月18 日には、経済産業省、JCCP 関係企業、㈳石油学会からの参加も得て、派遣研究者の現地活動報告会を開催しました。
この報告会で発表された、この2 年間の経験も踏まえて、今後も現地に溶け込んで研究支援活動を行うベテランの研究者の参画を得て、相手機関のニーズに即応した研究者派遣を継続したいと考えています。 (技術協力部 奥村 和久)

派遣研究者報告会(3月18日)、JCCP会議室にて