JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関 専務理事 安藤晴彦
JCCPウェブサイトの完全リニューアルに伴って「JCCPジャーナル」を開始いたします。「隗より始めよ」で、僭越ながら第一弾をお届けいたします。
空気のように当たり前で、生きるのに絶対必要なもの。日本のエネルギー安全保障を草の根で支え続ける組織「JCCP」とは
みなさま、「JCCP」ってお耳にされたことありますか?非常に良いことをやっているのですが、日本国内では知名度がありません。この2月の湾岸紛争で、石油のプロでも予想しないホルムズ海峡封鎖が起こり、未だに世界が揺れています。日本でも石油や石油関連製品の供給途絶への不安感が一気に高まりました。空気と同じで、生きるのに絶対に必要なのだけども、普段は意識しない。今回の危機で石油確保の重要性が改めて浮き彫りになりました。

45年間で築き上げた「28,000人の絆」と、世界を動かす卒業生たち
JCCPは、2度のオイルショックの経験を踏まえ、産油・産ガス国との友情と信頼の絆を創ることの大切さから、官民協力で1981年に設立されました。初代会長は経団連会長が兼務されました。それから45年間、約28,000人の研修生を受け入れ、約6,000人の専門家を現地に送り、技術協力では延べ24か国と293件の協力プロジェクトを地道に進めてきました。研修卒業生には、昇進して偉くなる人も多いのです。約5,000名のメールアドレスが使えるので調べてみたら、1,458人がマネージャー以上、144人が副社長以上、74人が上級副社長以上、43人がグループ会社を含むCEOで、女性幹部も多数含まれています。政府で要職に就く方もいて、現職法務大臣もおいでです。つまり、世界のエネルギー政策を動かす中枢に、これだけの「JCCPの仲間」がいるということです。
「JCCPの招きにNoと言ってはいけない」―世界の超巨大企業や国家要人が日本を頼る本当の理由
日本の石油最大輸入国は、UAEアラブ首長国連邦ですが、建国は1971年、その5年後の1975年から原油調達契約を結ぶJCCP会員日本企業が昨年50周年記念式典を行いました。アブダビの会場には50人以上いたでしょうか、リストを見たら半数以上がJCCPの研修卒業生でした。経済産業省の大先輩にご挨拶に行くと、「今時、世界の超大企業アラムコに教えることなどあるの?」と聞かれます。しかし、あるんです。アラムコから、品質管理や設備計画の特別研修をやってほしいと要望が来ます。王族で首相兄のエネルギー大臣からは直接、同省の若手職員を鍛えてほしいというご要望もいただきます。日本だからこそ頼れるものがあるのだと。

紛争下でもVIPたちが続々と来日。2週間で「家族」になる、唯一無二の研修
今回の湾岸紛争で、中東からの研修参加者が大幅に減るのではと心配しましたが、さにあらず。
UAEもサウジアラビアもオマーンもイラクも従来以上に研修生を送ってくれています。6月に開催した研修コースには、UAE、オマーン、タイから副社長が、サウジアラビアは、日本で言えば経済財政諮問会議のような首相直下の官民組織の事務局長、エネルギー省の部長級と課長、アラムコも課長を送ってきました。イラクもエネルギー省の部長と課長です。研修生としては超重量級ですね。でも、VIP級研修生が、2週間後には、友人、あるいは家族のようになります。これがJCCP研修の極めてユニークな点です。日本が石油・ガスのプロたちの人脈形成の支点になっているのです。アブダビ国営石油ADNOCから参加した女性課長は、「地域紛争のために、他の研修には行けなかったり、影響が出ていたりするのに、社内稟議の際に、最高幹部が『JCCPの招きにNoと言ってはいけない』と強く後押ししてくれた」と語ってくれました。厚い信頼を寄せられていて身が引き締まる思いです。これも長年の努力の蓄積のおかげでしょう。この最高幹部からは2年前に「全固体電池」の研修をやってほしいと直接頼まれました。最先端技術で企業秘密真っただ中ですから、実施は大変難しかったのですが、旧知のトヨタ元専務、元役員の方々を筆頭に良い研修を実施して要望にお応えできました。苦労が報われた気がします。
技術協力は「漫才コンビ」と同じ!?誰と組むかで、世界の壮大なイノベーションが動き出す
技術協力は、大変ユニークな視点で取り組んでいます。近年では、カーボンニュートラル技術開発のためにNEDOやMETIから巨額補助金が提供されています。JCCPでは、むしろ産油・産ガス国側の技術ニーズをきめ細かく聞き取ることで、イノベーションの「最初の1歩」の探索を支援しています。例えば、漫才コンビでも誰と誰が組むかで成功への道が分かれますね。中にはピン芸人になる人もいます。技術協力も同じで、誰と組むかで、結果が大きく異なります。特に、先の読めない先端技術開発では、まさにそのとおりです。
蹴飛ばされたアイデアが、オマーンの地で「壮大な国家計画」へ

「組む相手」を間違えれば決裂し、最高の相方に出会えれば世界が変わる――。そんな面白い事例があります。ソルガムという急成長する背の高いバイオマス原料があります。1年間に何毛作もできます。ある中東の国に持ち掛けたら、けんもほろろに蹴飛ばされました。それでもめげずに、今回の石油危機での隠れたヒーロー、オマーン国営石油のナンバー2最高戦略責任者に持ち掛けたら、敏感に反応し、名古屋の現地視察にも来てくれました。オマーンでは、石油掘削随伴水をプールで溜めて、環境影響を抑えていますが、そこに、この急成長して水をたくさん吸うソルガムは最適。環境対応に使える上に、バイオマス原料として、ジェット燃料化するという壮大な計画の1歩が、JCCPの技術協力事業として始まっています。誰と組むかで、話がコロッと変わります。

男性中心の石油産業に変革を。女性活躍の未来を陣頭指揮する、10年目の草の根活動

UAEとは、皇太后(大統領の母)と側近の女性国務大臣が、女性活躍推進に大変ご熱心で、JCCPが窓口となって、10年以上活動を続けています。大臣は、「女性のキャリア開発のための友好委員会」FCWを主宰され、UAEと日本で毎回交互に年2回、既に22回FCWフォーラムを実施し、大臣自ら全回出席されています。湾岸諸国やアジア諸国にも声掛けして、4,500人超が参加してくれました。長く男性中心だった石油産業でのジェンダー・バランスが次第に改善していくのを目の当たりにしています。大臣は、日本とUAEの間で、女性研究者・エンジニア間の交流と共同プロジェクトを応援しようと陣頭指揮されています。6月末に開催された22回目はオンライン開催でしたが、私は単独で現地に行き、今後の段取りを大臣たちと話し合ってきました。地道な活動なのですが、信頼と連帯こそが平和への鍵だと痛感しています。

揺れる世界、ソフトパワーが紡ぐサスティナビリティ。日本が持つ「本当の財産」を未来へつなぐ

JCCPでは、毎年国際シンポジウムを開催して世界の石油ガス産業の要人を招いています。今年は44回になりました。テーマは、「揺れる世界、ソフトパワーが紡ぐサスティナビリティ - エネルギーの共創と進化」です。地球環境問題は、企業単独、1国独自では対応できません。みんなが一緒に創り上げる「共創」が重要です。設立45周年を迎えたJCCPが人と技術の交流を通して長きにわたって築いてきた相互理解と信頼が紡ぐ「ソフトパワー」こそが、日本にとっての大きな財産であり、エネルギー変革期においても重要な役割を果たすと考えています。
ちょっと宣伝が過ぎたでしょうか。ご関心が向かれたら、是非、JCCPのウェブサイトを覗いてみてください。産油・産ガス国の友人たちと信頼の絆を紡いでいくために、地道ですが、草の根の活動を続けています。

