JCCP 一般財団法人 JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関

2019年度事業総括

 平成31(令和元)年度事業は、昨今の厳しい財政状況の中、当機関の事業について対外的有効性・効果が評価され前年度を上回る国庫補助事業予算の下、年度当初より順調に実施されたものの、年末から発生した新型コロナウィルスが年度末に掛けて爆発的に世界中へ拡散したことから、当初の事業計画は目標達成に至らなかったが、一定の成果を認められる。

 事業実施の基本方針として前年度に引き続き、従来の石油の安定供給に資することに加え、我が国石油産業の競争力強化のための製品輸出拡大や海外事業展開の支援を掲げてきた。これに基づき日本企業より要請のあったアルゼンチンへの協力案件を新規に実施した。

 また、日本政府が推進するLNG関連における協力案件の掘り起こしを行い、研修コースへのLNG関連カリキュラムを常設した他、日本政府の意向を受けて米国の対イラン制裁対象外の研修を実施し、日本のプレゼンスを高めた。

 連携促進事業では、第38回国際シンポジウムを開催し、13ヵ国15名のパネリストがテーマに沿った講演を行い、活発な意見交換がなされた。また、本年度は「女性のキャリア開発友好委員会」を早稲田大学構内で開催したことにより、将来、石油関係業界に関心を持ってもらうことや一層の議論の深化と産油国側の評価を得ることが出来た。

 各事業の詳細は以下の通りである。

人材育成事業

1. 事業報告

 直轄受入研修では、レギュラーコースとして、戦略・プロジェクト管理、マーケティング・物流5コース、人材・財務会計関係3コース、環境・新エネ・省エネ2コース、品質・安全管理2コース、プロセス・発電技術3コース、メンテナンス5コース及び計装制御2コースの計22コースを実施した。

 また、中東産油国、東南アジア諸国及び新しいエネルギー供給源になることが期待される産油国に対して、相手国からの個別の要請に基づきカスタマイズド研修を実施してきた。平成31(令和元)年度は、受入れをサウジアラビア、カタール、UAE、クウェート、イラン、ベトナム、ミャンマー、フィリピン、インドネシア等を対象に11コース、派遣はUAE、インドネシア、フィリピン3件の合計14コースを実施した。

 直轄受入研修415名と企業協力研修170名を併せ、参加した研修生585名を受け入れた。直轄受入研修のコース別実績は、以下2.事業実績にある記事のとおりである。

 なお、JCCPが設立された1981年以来、平成31(令和元)年度末にて累積25,384名の研修生を受け入れた。

 研究者交流事業は、産油・産ガス国と日本の相互で研究者の派遣・受入を行うことで、将来、石油産業下流分野に活かされる先端技術開発に携わる研究者の育成を狙いとして実施している。平成31(令和元)年度は、研究者派遣事業として、サウジアラビア(KFUPM)とクウェート(クウェート科学研究所)にそれぞれ1名延べ1か月派遣した。さらに、石油学会委託事業として、サウジアラビア(サウジアラムコR&D)、UAE(ADNOC石油精製リサーチセンター)、イラク(イラク石油省石油研究開発センター)、クウェート(クウェート科学研究所)及び、ベトナム(ベトナム石油研究所)から計6名を延べ1~2か月間、石油会社研究所及び大学等の研究機関に受け入れると共に、サウジアラムコの要請に基づき、研究者2名を共同研究への展開に向けて延べ10日KAUST,サウジアラムコ、KFUPMに派遣した。

人材育成1 研修最終日

人材育成2 チームビルディングワークショップ

人材育成3 シミュレーター研修

人材育成4 ワークショップ

2. 事業実績

3. ニュース記事から

技術協力事業

1. 事業報告

産油・産ガス国の石油産業下流分野等が抱える技術的課題の解決を支援するため、基盤整備事業として、わが国の技術・ノウハウの移転および産油国と共同で技術開発等を実施している。平成31(令和元)年度は基盤整備事業として以下3段階に分け事業課題の抽出(基礎調査事業)として5か国5件、事業の実現性の確認(支援化確認事業)として7か国10件、産油国側との共同プロジェクト(共同事業)として8か国17件を、

それぞれの段階で妥当性を確認しながら実施した。

 平成31(令和元)年度事業の特記としては、事業実施協定を3件締結し、そのうち2件は新たな共同事業「ADNOCグループの油濁防除能力強化に向けた共同事業(UAE)」「プラント信頼性・健全性維持のための保全・検査業務の最適化支援に関する検討(インドネシア)」をスタートしました。

 また、水素戦略や水素ロードマップの策定を目指すクウェートから水素シンポジウムの開催要請を受け基礎調査事業として、KPC、KFASと共同で『Kuwait Symposium on Blue Hydrogen』を12月12日にKPC本社会場で開催し、

全12講演、日本から8名が参加し、水素社会、水素の製造、輸送、水素の利用について170名を超える会場参加者との間で熱心な意見交換がなされました。

技術協力1 事業実施協定書(MOA)調印式@UAE

技術協力2 水素シンポジウム@クウェート

技術協力3 事業実施協定書(MOA)調印式@インドネシア

技術協力4 日本/アラムコ製油所間課題解決事業ワークショップ

2. 事業実績

連携促進事業

1. 事業報告

 連携促進事業は各種国際会議の開催等により情報交流や人的関係を促進強化する活動です。

  JCCP国際シンポジウムは、エネルギーの専門家や産油・産ガス国の石油関係機関から政府関係者や経営幹部を日本に招聘し、日本の石油ダウンストリームの専門家と、

現在の石油供給上の問題とその解決について意見を交換するために、創立以来、毎年一回開催しています。石油ダウンストリームにおいて、相互に協力しあう関係であることを確認し、さらに将来に向けて協力の機会を見つけ出すための会議です。

 今年度は、令和2年1月に第38回JCCP国際シンポジウム「石油ガス産業の持続可能性を目指して ー顕在化する課題と克服ー」 をホテルオークラ東京で13カ国16名の講演者を招き、開催しました。リーダーズパネル1では、中東・アジアの産油・産ガス国の政府関係者とエネルギー専門家の間で、政策の観点から人材育成や組織改革や環境問題について意見交換が行われました。午後のリーダーズパネル2では人材育成、パネル3では技術について、それぞれのテーマに基づいて、中東・アジア・北アフリカの産油・産ガス国の国営石油会社及び日本企業のパネリストと会場の間で活発な意見交換が行われました。経済産業省・産油国・各国駐日大使館・諸官庁・国内企業・団体等から約350人の参加がありました。

 テーマ別合同シンポジウムは、各国・各機関からの要請を受けて相手国あるいは日本で共同開催し、日本の先進技術や研究成果等を広く内外に知らしめるとともに、相手国との情報の交流を行うものです。その結果として、相手国と日本との間での新たなコラボレーションが行われる契機にもなっています。

 【FCWフォーラム】第9回女性のキャリア開発に向けた友好委員会(FCW)をアブダビにて令和元年6月18~20日で開催し、日本から8名の女性委員、アブダビ国営石油会社グループから12名の女性委員が参加し、パネルディスカッション、ワークショップ、報告会を行いました。第10回目のFCWフォーラムは、CPJ-9-19:女性のためのマネジメントとリーダーシップ研修の期間中の令和元年

11月20日に早稲田大学西早稲田キャンパスにおいて、開催しました。大学と共催したことにより、石油業界関係者のみならず、学生・研究者等広く多くの方にもご参加いただきました。

 【JCCP-アラムコ共催シンポジウム】『Saudi Aramco-JCCP Symposium on Refinery of the Future』(アラムコ、JCCPの共催)を東京プリンスホテル 2F 鳳凰の間にて令和元年9月17~18日で開催し、全22講演中、日本から12名が参加、約370名の会場参加者との間で意見交換がなされました。

 【日本サウジアラビア合同シンポジウム】第29回日本サウジアラビア合同シンポジウム『Technology in Petroleum Refining & Petrochemicals』(サウジアラムコ、キングファハド石油鉱物資源大学、石油学会、JCCPの共催)をサウジアラビアのキングファハド石油鉱物資源大学構内のテクノ・バレーにて令和元年11月3~4日で開催し、全23講演中、日本から6名が参加、約130名の会場参加者との間で技術に関する意見交換がなされました。

 【日本クウェート合同シンポジウム】第19回日本クウェート合同シンポジウム『Advancement in Petroleum Refining Industries』(KNPC、クウェート科学研究所、石油学会、JCCPの共催)をクウェート科学研究所にて令和2年2月3~4日で開催し、全24講演、日本から5名が参加し、約120名の会場参加者との間で技術に関する意見交換がなされました。

連携促進1 第38回JCCP国際シンポジウム

連携促進2 第9回女性のキャリア開発に向けた友好委員会

連携促進3 アラムコ-JCCP共催シンポジウム

連携促進4 第19回日本クウェート合同シンポジウム

2. 事業実績

海外事務所から

 JCCPでは、サウジアラビア国のアル・コバールとUAE国のアブダビに海外事務所(アル・コバール事務所、中東事務所)を配置しています。各事業所の中東担当国は、アル・コバール事務所がサウジアラビア・クウェート・イラク・バーレーン、中東事務所がUAE・カタール・オマーン・イランとなっています。

 海外事務所の主な業務としては、上記担当国における各事業をスムーズにかつ安全に実施すべく、現地での各種支援、情報収集などを行っています。

 JCCP設立以来、中東産油国の国営石油会社等と、人材育成及び技術協力事業、連携促進事業を通して築いてきたネットワークを生かし、中東産油国の石油ダウンストリームに於いて日系企業の事業展開の支援を行っております。またこれから事業展開を図ろうとしている日系企業とも協働して、新たな関係構築のため新規事業の検討、ワークショップ等を実施する支援も行っています。

 今年度は、アル・コバール事務所長が雨宮から岩松に交替しました。中東事務所長は引き続き福本が担当しています。

海外事務所1 アルコバール事務所

海外事務所2 中東事務所