JCCP 一般財団法人 JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関

2020年度事業総括

 令和2年度は、昨今の厳しい財政状況の中、当JCCPが行う各種事業について対外的有効性及び効果が高く評価され、引続き少額ではあるが前年度を上回る国庫補助事業予算の下、順調に実施でるように事業計画を立てました。しかしながら、前年(平成30[2019]年11月末)に中国武漢市で発生した新型コロナウイルス(以下「コロナ禍」)が、同年度末に掛けて爆発的に世界中へ拡散し、更に本年度になってもその勢いは衰えずに増大したため、上半期は事業実施が出来ませんでした。しかし、下半期はインターネットを活用したオンライン形式で事業を展開することによって、当初の事業計画は目標達成に至らなかったものの、一定の成果は認められました。

 事業実施の基本方針として前年度に引き続き、従来の石油・ガスの安定供給に資することに加え、我が国における

石油産業の競争力強化のための製品輸出拡大や海外事業展開への支援、およびSDGsが掲げる脱炭素化への貢献を掲げました。一方で、コロナ禍感染拡大によって世界中が渡航制限を行い人の往来は全くできなかったため、各種事業をオンラインにて着実に行い各国からの要請に応えることで、日本のプレゼンスを高めることができました。

連携促進事業では、第39回国際シンポジウムをオンラインによるライブ配信で開催し、12ヵ国16名のパネリストがテーマに沿った講演を行うとともに、活発な意見交換がなされました。また、本年度は「女性のキャリア開発友好委員会」を、同じくオンラインで行ったことで、一層の友好関係の深化と産油国側の評価を得ることが出来ました。

 各事業の詳細は以下の通りです。

人材育成事業

1. 事業報告

令和2年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、従来の渡航を伴う対面形式の研修実施は困難となり、オンライン形式の研修を9月より開講しました。直轄受入研修では、レギュラーコースとして、戦略・プロジェクト管理、マーケティング・物流4コース、人材・財務会計関係2コース、環境・品質・安全管理3コース、プロセス・発電技術3コース、メンテナンス5コース及び計装制御1コースの計18コースを実施しました。

この研修形式の転換に対応するために、外部の専門家・会社を活用した研修設計の方法、授業方法、レクチャラーの育成、プレゼン方法等の学習に取り組んできました。その上で、オンライン形式の研修において不足しがちなレクチャラーと参加者との双方向交流や参加者同士の交流を補うために、参加者の特性評価を元にレクチャラーとの個別面談や新規事業立案ゲーム、ワークショップの活用による参加者間の討議機会を創出することで参加者の満足を得るこ

とが出来ました。さらに、3D VR(仮想現場の疑似体験)や事前に収録した現場の映像を活用することで、参加者ニーズの高い現場視察の要素も取り込み参加者から好評を得ることが出来ました。

次に、中東、東南アジア産油国を対象としたカスタマイズドコースも相手国からの個別の要請に基づき実施しました。令和2年度は、サウジアラビア、UAE、イラン、ベトナム、ミャンマー、フィリピン、インドネシアを対象に4コース(女性管理者向けコースを含む)を対象に実施しました。

この結果、直轄受入研修300名と企業協力研修52名を併せ、参加者352名をオンライン形式の研修に受け入れました。直轄受入研修のコース別実績は、以下2.事業実績にある記事のとおりである。

尚、JCCPが設立された1981年以来、受け入れた参加者は令和2年度末時点で累積25,905名に達しました。

 研究者交流事業は、産油・産ガス国と日本の相互で研究者の派遣・受入を行うことで、将来、石油産業下流分野に活かされる先端技術開発に携わる研究者の育成を狙いとして実施しています。令和2年度は石油学会委託事業として、ベトナム(ベトナム石油研究所)から1名を大学の研究機関に受け入れました。

受け入れは、コロナ禍の影響で来日が困難であったことから、オンライン方式にて実施しました(11月~2月の間、1回/月のオンライン指導)。なお、コロナ禍の影響で海外研究機関から研究者派遣の要請がなく、令和2年度の研究者派遣は実施する事が出来ませんでした。

人材育成1 オンライン研修

人材育成2 研修最終日

人材育成3 オンライン研修

人材育成4 研修最終日

2. 事業実績

技術協力事業

1. 事業報告

産油・産ガス国の石油産業下流分野等が抱える技術的課題の解決を支援するため、基盤整備事業として、わが国の技術・ノウハウの移転および産油国と共同で技術開発等を実施しています。令和2年度は基盤整備事業として以下3段階に分け、事業課題の抽出(基礎調査事業)として1か国1件、事業の実現性の確認(支援化確認事業)として5か国10件、産油国側との共同プロジェクト(共同事業)として8か国19件を、それぞれの段階で妥当性を確認しながら実施しました。

令和2年度事業の特記としては、事業実施協定を3件締結し、そのうち2件は新型コロナウイルス感染拡大を踏まえてオンラインでの調印式を実施しました。オンラインによる調印式を実施して開始した新たな共同事業は

「LPG産業の近代化に関する共同事業(ベトナム)」と「プルタミナ/PGNとの協働によるインドネシア国のガスバリューチェーン整備・効率化事業(インドネシア)」の2件です。

なお、コロナ禍の影響をうけ、海外出張および技術者の招へいは、一切実施できませんでした。しかしながら、web会議システムを活用した対話の継続、カメラを通じての技術指導、受領した現地操業データに基づく運転改善提案、現地試料の輸入または代替品の国内分析による検討、また、ドローンやヘッドカメラを利用して現地状況を把握するなど、対面での検討や議論は無理な状況下でも、リモートにて極力事業の推進を図りました。

技術協力1 事業実施協定書(MOA)調印式/インドネシア

技術協力2 オンライン打合せ

技術協力2 事業実施協定書(MOA)調印式/ベトナム









⇚ ADNOCグループの油濁防除能力強化に向けた共同事業

オンラインー図上演習
(日本、ADNOC HSE、ムサファ基地、ルワイス基地、ジルク島基地)

2. 事業実績

連携促進事業

1. 事業報告

連携促進事業は、各種国際会議の開催、ネットワーク会議などを実施することにより、情報交流、技術交流及び人的交流の促進強化目的とする事業です。

【国際シンポジウム】JCCP国際シンポジウムは、エネルギーの専門家や産油・産ガス国の政府関係機関・国営石油会社などから次官や経営者等の幹部を招へいし、日本の石油関係企業幹部等とともに講演及び各リーダー同士間による意見交換や情報共有を通じて、我が国の石油・天然ガス供給安定化に向け協力して取組むべき課題等を明らかにするほか人的交流を行うために、設立以来、毎年一回開催しています。さらに将来に向けて協力の機会を見つけ出すための会議です。

令和2年度は、第39回JCCP国際シンポジウムをオンライン形式で実施しました。設立以来、初のオンラインでの開催となりましたが、例年よりも多くの方々(約600名)にご参加いただきました。特に開始時間を海外の現地時間に配慮したことにより海外の参加者も増え、新しいスタイルのシンポジウムになりました。12カ国16名の講演者は、「岐路に立つ石油産業の展望と挑戦 -持続可能社 会への貢献と戦略-」のテーマに沿った内容で発表し、国内外の共通の課題が明らかになり、それぞれの政策や戦略を理解することができました。

リーダーズパネル1では、政策的・経営の立場からメインテーマについて議論されました。リーダーズパネル2では、"ニューノーマル時代の経営と人材育成 -リーダーの育成と技術伝承"のサブテーマで、デジタル技術を活用した新しい経営やリーダーの育成プログラムなどについての発表が行われ、課題と解決策が共有されました。リーダーズパネル3では"カーボンニュートラルに向けた技術革新 - 燃料技術、石油化学、水素、CCUS -"のサブテーマで、各国がおかれている状況は大きく異なり、それぞれ特色のある内容で講演と意見交換が行われました。

その他、テーマ別合同シンポジウムは、各国・各機関からの要請を受けて相手国あるいは日本で共同開催し、日本の先進技術や研究成果等を広く内外に知らしめるとともに、相手国との情報の交流を行うものです。その結果として、相手国と日本との間での新たなコラボレーションが行われる契機にもなっています。

【FCWフォーラム】6月にアブダビで予定していた第11回女性キャリア開発に向けた友好委員会会議(FCW Forum)は、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け中止となりましたが、第12回目のFCWフォーラムはオンライン形式で開催することができました。このFCWフォームは中東の石油関連企業で働く女性管理職を対象にした研修*の最終日(11月18日)に研修プログラムの一環として実施しました。研修プログラムの一つとして行ったワークショップでは、UAEとサウジアラビアの15名の研修生は日本の石油関連会社及びエンジニアリング会社の女性社員7名と、女性活躍推進における意識・制度の見直しやDXを活用した働き方改革について、意見交換を行いました。その内容はFCWフォーラムにおいて報告されました。特にコロナ禍で急速に進展したテレワークの課題はパネルディスカッションにおいても議論されました。 *女性管理職向けマネジメントとリーダーシップ研修(CPJ-8-20)

【日本サウジアラビア合同シンポジウム】第30回を記念する日本サウジアラビア合同シンポジウムを計画していましたが、コロナ禍の影響を受けて、シンポジウムは次年度に延期しました。代替イベントとして、「革新的石油精製&石油化学」をテーマとするオンライン技術交流会(サウジアラムコ、キングファハド石油鉱物資源大学、石油学会、JCCPの共催)を令和3年2月8日に開催しました。全7講演中、日本側から4講演、サウジ側から3講演が行われ、当日は約200名が視聴するイベントとなりました。

連携促進1 第39回JCCP国際シンポジウム

連携促進2 第12回女性のキャリア開発に向けた友好委員会

連携促進3 第39回JCCP国際シンポジウム

連携促進4 第12回女性のキャリア開発に向けた友好委員会

2. 事業実績

海外事務所から

 JCCPでは、サウジアラビア国のアル・コバールとUAE国のアブダビに海外事務所(アル・コバール事務所、中東事務所)を配置しています。各事業所の中東担当国は、アル・コバール事務所がサウジアラビア・クウェート・イラク・バーレーン、中東事務所がUAE・カタール・オマーン・イランとなっています。

 海外事務所の主な業務としては、上記担当国における各事業をスムーズにかつ安全に実施すべく、現地での各種支援、情報収集などを行っています。また、JCCP設立以来、中東産油国の国営石油会社等と、人材育成及び技術協力事業、連携促進事業を通して築いてきたネットワークを生かし、中東産油国の石油ダウンストリームに

於いて日系企業の事業展開の支援を行っております。

令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により中東産油国の各国営石油会社は外部との面談を遮断しています。現地駐在ならではの活動に制限があるものの、オンライン利用による事業実施サポートを行った他、広報活動を行いました。

たとえば、サウジアラビアでは、サウジアラビア航空、ラウンジ・機内用雑誌(月刊、Leaders)向けにインタビューを受け、その内容が Leaders 2020年9月号(p.20~25)などに掲載されました。

月刊 Leaders: https://www.leaders-mena.com/leader/leaders-septemper-2020/

海外事務所1 アルコバール事務所

海外事務所2 中東事務所