JCCP 一般財団法人 JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関

2022年度事業総括

 令和4年度(2022年度)は、コロナ禍が収束しつつある中、人材育成事業、技術協力事業、連携促進事業について人の往来が活発化し、コロナ前の状況に戻りつつあるとともに、オンラインの特性、メリットも生かした効率的な事業運営を実施することができました。

 また、令和4年(2022年)2月のロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けて、原油価格、天然ガス価格は予断を許さない状況にありましたが、原油市場、天然ガス市場の安定化は、世界及び日本経済の安定化にとって極めて重要なことと認識しており、このような状況において JCCP の事業を通じた産油国との協力関係の更なる推進は、日本のエネルギー安定供給確保の一端を担うものとしてこれまで以上に重要なものと認識したところであります。

 他方、動きが激しいカーボンニュートラルへの対応が急務とされる中、地球環境対策も考慮しつつ、7月1日には当財団内に持続可能エネルギー部を設置、8月1日には、「持続可能エネルギー」を組織名に追加して、対内的にも対外的にも、当財団の立ち位置を明確にするとともに、柔軟かつ機動的な組織であることをアピールしております。

令和4年度におきましても、各事業におきましてカーボンニュートラル関連の事業が目立っておりますが、今後ますますプレゼンスを高めていくものと認識しております。

 さらに、当財団の40年間にわたるこれまでの歴史を振り返るべく、40年史を発行しましたが、これまでの実績を辿るだけではなく、次の40年に向けて全ての役職員が気持ちを一にして、業務に取り組む姿勢を示すための重要なものでもあります。 

 41回目を迎えた国際シンポジウムは、3年ぶりに海外の講演者が来日し、対面とライブ配信にて開催いたしましたが、経済産業省・産油ガス国・各国駐日大使館・諸官庁・国内外企業・団体等から来場とオンラインを合わせ約600名の方々に ご参加をいただきました。

 また、「女性のキャリア開発に向けた友好委員会(FCW)」では、年2回の開催をそれぞれUAE、東京で開催することができ、より活発な議論を行うことができました。

 各事業の詳細は以下の通りです。

人材育成事業

1. 事業報告

 令和4年度は新型コロナ禍による行動制約が段階的に緩和されたことから、産油・産ガス国から旺盛な要望を得ていた対面形式の研修コースを再開しました。5月開催のレギュラー3コースはオンライン形式であったものの、6月開催コースではオンライン形式の参加者に加え一部訪日参加を交え、8月以降のコースでは訪日による対面形式の直轄研修コース開催としました。直轄受入研修では、レギュラーコースとして、戦略マネジメント・財務マネジメント関連:3コース、人材関連:2コース、プロジェクトマネジメント関連:2コース、カーボンニュートラル関連:1コース、石油物流関係:2コース、DX・計装制御関連:3コース、製油所設備・LNG利用技術:3コース、環境・品質・安全管理:3コース、メンテナンス関係:3コースの計22コースを開催しました。

 なお、令和4年7月の持続可能エネルギー部の発足を機に上述のカーボンニュートラル関連コースだけでなく、中東を中心としたカスタマイズドコースを4コース開催し参加者から好評を得ました。

 今年度はオンライン形式からハイブリッド形式、対面形式の研修へ変遷していく中で、研修効率向上のための工夫を継続して講じ深化させました。具体的には、ハイブリッド形式の研修における研修運営方法の改善や、参加者同士の交流を促進するためにゲーミフィケーションやワークショップを活用した研修生参加型のプログラムを導入し、参加者の満足度を更に向上することが出来ました。また、3D VR(仮想現場の疑似体験)教材の活用により、参加者ニーズの高い現場視察の要素も取り込むことが出来ました。

 次に、中東や東南アジア産油国を対象としたカスタマイズドコースも相手国からの個別の要請に基づき実施しました。令和4年度は、サウジアラビア、UAE、カタール、オマーン、ベトナム等を対象に12コース(女性管理者向けコースを含む)を対象に実施しました。この結果、直轄受入研修440名と企業協力受入研修133名を併せ、参加者573名を研修に受け入れました。

 直轄受入研修のコース別実績は、以下2.事業実績にある記事のとおりです。

尚、JCCPが設立された昭和56年(1981年)以来、受け入れた参加者は令和4年度末時点で累積27,019名に達しました。

受入研修1 CPJ-8-22 カーボンニュートラルの達成に向けた
移行期における戦略と計画

受入研修2 TR-5-22
石油産業のためのプロジェクトマネジメント

 研究者交流事業は、産油・産ガス国と日本が相互に研究者の派遣と受入を行うことにより、将来、石油産業下流分野に活かされる先端技術開発に携わる研究者の育成を狙いとして実施しています。

 令和4年度は石油学会委託事業として、イラク石油省石油研究開発センターとキングファハド石油鉱物資源大学から、大学の研究室と国内研究機関にそれぞれ1名受け入れました。対面での研究者受入は令和元年(2019年)以来のことでした。 来日した研究者は、1月~2月の間に日本の受入機関で研究を行い、JCCPにて成果報告会を行ったのちに修了証を授与されました。

 コロナ禍の影響もあって、日本から相手国への研究者派遣については海外研究機関からの要請が見送られたため、令和4年度に研究者の海外派遣は実施できませんでした。それに代わる事業として、キングファハド石油鉱物資源大学の博士課程5名、日本の大学の助教1名と博士課程2名が参加する若手研究者によるオンライン方式のワークショップを開催し、各自の研究テーマの発表と質疑応答を行い、研究者間の相互交流を深めました。

人材育成1 イラク石油省石油研究開発センターの研究者

人材育成2 キングファハド石油鉱物資源大学の研究者

2. 事業実績

技術協力事業

1. 事業報告

 産油・産ガス国の石油産業下流分野等が抱える技術的課題の解決を支援するため、基盤整備事業として、わが国の技術・ノウハウの移転および産油国と共同で技術開発等を実施しています。令和4年度は基盤整備事業として以下3段階に分け、事業課題の抽出(基礎調査事業)として2ケ国3件、事業の実現性の確認(支援化確認事業)として7ケ国11件、産油国側との共同プロジェクト(共同事業)として8ケ国17件を、それぞれの段階で妥当性を確認しながら実施しました。

 令和4年度事業の特記としては、事業実施協定を6件締結し、うち5件については現地にて調印式を実施しました。新たに開始した共同事業は「サウジアラムコでの蒸気システム最適化プログラムのパイロット事業」、

「サウジアラムコへ最新の検査技術を紹介する共同事業」、「ADNOCグループの油濁防除能力強化に向けた共同事業 PhaseⅡ (UAE)」、「ADNOC Refining社Research Centre & Quality Control Division (ARRC)との製油所安定操業・稼働率最大化に向けた共同支援(UAE) Phase III」、「バンチャック製油所の運転最適化に関する共同事業」、「製油所廃棄物の処理に関する共同事業(マレーシア)」の6件です。

 なお、コロナ禍の収束を踏まえて、ほぼ全ての事業で現地での対面協議を実施し、技術者の招聘も再開いたしました。コロナ禍での経験を踏まえて、対面協議とweb会議を組み合わせて効率的な事業推進に努めました。

技術協力1 令和4年 (2022) 5月 サウジアラムコとのMOA調印
コロナ禍発生以降初 現地対面での調印式実施

技術協力2 令和5年 (2023) 1月 製油所課題解決に向けた事業にてサウジアラムコ技術者ワークショップ等実施

2. 事業実績

連携促進事業

1. 事業報告

連携促進事業は、各種国際会議の開催、ネットワーク会議などを実施することにより、トップマネジメントとの直接的な対話を行い、情報交流、技術交流及び人的交流の促進強化を目的とする事業です。

 【国際シンポジウム】JCCP国際シンポジウムは、JCCPが設立以来毎年一回開催されており、産油・産ガス国の政府関係機関・国営石油会社などから大臣・次官クラスや経営者等の幹部またはエネルギーの専門家を招聘し、日本の石油関連企業幹部と共に講演を行っています。各リーダー同士による意見交換や情報共有を通じて、我が国の石油・天然ガス供給安定化に向け協力して取組むべき課題等を明らかにするほか、人的交流を通して産油・産ガス国との関係維持・強化の場となっています。

 議論のテーマは、毎年、石油・ガス産業を取り巻く環境や状況を鑑みて、その時々に適した内容にフォーカスしています。例えば、人口急増減による需給の変動、環境問題の深刻化、産油国における中核人材の自国民化、シェールオイル・シェールガス革命、原油価格の下落、環境問題への更なる対応の必要性等、近年では、カーボンニュートラル、原油価格の高騰、地政学的問題などがテーマとなっています。

 令和4年度は、第41回JCCP国際シンポジウムを令和5年 (2023年) 1月26日に3年ぶりに海外講演者を招聘し、対面式で開催することができました。会場参加の他、ライブ配信の視聴者を合わせて600名ほどの方に参加いただきました。講演者は、"激変する国際経済における石油・ガス産業の戦略と挑戦"のメインテーマのもと、13ケ国17名が各パネルにおいて、相互に協力しあう関係であることを再認識し、課題解決のための意見交換が行われました。

 リーダーズパネル1ではメインテーマである「激変する国際経済における石油・ガス産業の戦略と挑戦」について、政府関係者・国内外の石油会社とエネルギー専門家の間で政策的・経営の立場から議論されました。リーダーズパネル2では、「変革期の経営戦略に応えるリーダーシップと人材開発」のテーマで、人材育成と経営にフォーカスし、共通の課題である人材の育成に向け、それぞれの取り組みが紹介されました。 またリーダーズパネル3では、「カーボンマネジメント技術開発への期待」のテーマで、各国の課題や具体的な技術開発の取り組みが紹介されるなど、各パネルで参加各国の最新情報や状況を把握することにより共通の課題が明らかになり、それぞれの政策や戦略を理解することができました。

詳細はこちらからご参照ください。

シンポ1 第41回JCCP国際シンポジウム

シンポ4 リーダーズパネル2

シンポ2 リーダーズパネル1

シンポ3 リーダーズパネル3

 【日本サウジアラビア合同シンポジウム(研究・技術)】 令和4年(2022年)12月12、13日の両日にサウジアラビア国キングファハド石油鉱物資源大学ダーランテクノバレーにおいて、サウジアラムコ、キングファハド石油鉱物資源大学、石油学会、JCCPの共催で、第31回日本サウジアラビア合同シンポジウム(研究・技術)を開催しました。「石油精製および石油化学技術」(Technology in Fuels & Petrochemicals)をテーマに基調講演2件、一般講演19件(うち、日本から5件)と、若手研究者によるポスターセッション10件の発表があり、140名を超える方が参加して活発な質疑応答等が交わされました。

 なお、同シンポジウムに先立ち、12月11日に昨年度より延期となっていた第30回日本サウジアラビア合同シンポジウムの記念パーティーを、モーベンピック アル・コバールホテルで、サウジアラビアの関係者、現地日本企業関係者約100名の参加を得て開催しました。

 【アラムコ-JCCP共催シンポジウム】 令和5年(2023年)3月14、15日の両日東京にて、サウジアラムコとJCCPの共催で「Pathway to Sustainable Energy - Role of Technology Innovation & Prospects -」をテーマにシンポジウムを開催しました。政策決定者、シンクタンクや学術界、製造部門、エンジニアリング部門、消費部門の業界専門家による21件の講演(うち、日本から18件)が行われ、持続可能なエネルギーに向けたバリューチェーン全体を俯瞰したものとなりました。約220名の参加者は、将来の石油精製や製油所について、石油業界、化学業界、自動車業界、海運業界、航空業界、技術提供企業の専門家の知見を踏まえて情報交流を行いました。今後、日本とサウジアラビアとの新たなコラボレーションの機会となることを期待しています。

連携促進1 日サ合同シンポジウム

連携促進2 アラムコ-JCCP共催シンポ3月14日

連携促進3 日サ合同シンポジウム

連携促進4 アラムコ-JCCP共催シンポ3月15日

 【FCWフォーラム】 平成27年(2015年)、UAEと日本の女性のキャリア開発を目的にFCW委員会 (Friendship Committee for Women Career Development) が設立されました。フォーラムはこの活動の一つとして、毎年、情報交換の場として開催されております。

 令和4年度は、11月16日(水)に第15回FCWフォーラムが開催されました。本フォーラムは3年ぶりにUAE等GCC諸国からの来日が叶い、会場参加の他、ライブ配信の視聴者も合わせて200名ほどの参加がありました。テーマは、"Women in Management−変革期における共創のために"です。

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて大きな転換期を迎え、持続可能な石油・ガス産業を目指し、事業構造の再構築を進めている中、同産業で働く女性たちの意識調査*の結果から現れた課題を踏まえ、明るい未来を想像しながら自分たちの能力をどのように伸ばし、どのように貢献できるか、組織の活性化」と「個人の成長」について、講演者、発表者や参加者と共に考えるフォーラムになりました。

 【UAE-日本合同調査】FCW*活動の一環として、コロナ禍で女性の働き方の変化や女性活躍の影響・課題について、3年を掛けてUAEと日本で合同調査を実施しました。令和2年度は調査設計を、令和3年度は実査・定量分析を行い、令和4年度はUAE大学と早稲田大学の協力を得ながら、両国の比較分析研究を経て調査報告書にまとめました

 石油・ガス関連業界における「働く女性に関する意識・実態」と「コロナ禍が及ぼした家庭と仕事への影響」について、日本側はFCW活動の企画・執行委員会メンバーの所属する企業7社の男女、UAE側はADNOCグループの女性を対象にアンケート調査を実施しました。回収数は、日本2,347件(男性1,885、女性455、その他3、無回答4)UAE女性のみ403件でした。

 特に、合同報告書作成においては、女性(日本側455人 UAE 403人)に絞り比較考察を行い、それを両国の大学教授からなる調査チームが学術的考察を行いました。

2. 事業実績

海外事務所から

 JCCPでは、サウジアラビアのアル・コバールとUAEのアブダビに海外事務所を配置しています。 (アル・コバール事務所、中東事務所)

 各事業所の中東担当国は、アル・コバール事務所がサウジアラビア・クウェート・イラク・バーレーン、中東事務所がUAE・カタール・オマーン・イランとなっています。

 海外事務所の主な業務としては、上記担当国における各事業をスムーズにかつ安全に実施すべく、現地での各種支援、情報収集などを行っています。

 また、JCCP設立以来、中東産油・産ガス国の国営石油ガス会社等と、人材育成及び技術協力事業、連携促進事業を通して築いてきたネットワークを生かし、中東産油国の石油ダウンストリームに於いて日系企業の事業展開の支援を行っております。

 令和4年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により遮断となっていた中東産油・産ガス国の各国営石油ガス会社の外部との面談が全面的に再開されたため、従来のオンライン利用による事業実施サポートに加えて、日本からの出張者と共に、現地におけるシンポジウム開催などへのサポート活動を行いました。

海外事務所1 アル・コバール事務所
(第31回日本サウジアラビア合同シンポジウム)

海外事務所2 中東事務所