JCCP 一般財団法人 JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関

2023年度事業総括

 令和5年度(2023年度)は、コロナ禍は収束し、人材育成事業、技術協力事業、連携促進事業について人の往来が活発化し、コロナ前の状況とは若干違った様相を見せており、バーチャルと対面式を融合した効率的な事業運営を実施することができました。

 また、令和4年(2022年)2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、原油価格、天然ガス価格は上昇局面にありましたが、その後は値動きの大きな展開となり、今後の価格動向が注視されます。いずれにせよ、原油市場、天然ガス市場の安定化は、世界及び日本経済の安定化にとって極めて重要なことと認識しており、このような状況において JCCP 事業を通じた産油・ガス国との協力関係の更なる推進は、日本のエネルギー安定供給確保の一翼を担うものとしてこれまで以上に重要なものと認識したところであります。

 

 カーボンニュートラルへの対応につきましても、柔軟かつ機動的な事業運営を行っており、JCCP事業におきましてもカーボンニュートラル関連の事業が活発化しております。今後は、政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた取組みが加速するなか、JCCPはそうした政府の動きに迅速に対応した事業運営が求められるものと認識しております。

 42回目を迎えた国際シンポジウムは、4年ぶりに講演者が全員来日し、対面で開催いたしましたが、経済産業省・産油・ガス国・各国駐日大使館・諸官庁・国内外企業・団体等から約270名の方々にご参加をいただきました。 

 また、「女性のキャリア開発に向けた友好委員会(FCW)」では、年2回の開催をそれぞれUAE、東京で開催することができ、D&Iのみならず、カーボンニュートラルについても議論を深めることができたことは大きな成果であると自負しております。

 各事業の詳細は以下の通りです。

人材育成事業

1. 事業報告

 令和5年度は新型コロナの5類感染症移行に伴い、全コースを対面形式の研修コースとして実施しました。直轄受入研修では、レギュラーコースとして、戦略マネジメント・財務マネジメント関連:3コース、人材関連:2コース、プロジェクトマネジメント関連:3コース、カーボンニュートラル関連:1コース、石油物流関係:1コース、DX・計装制御関連:3コース、製油所設備・LNG利用技術:4コース、環境・品質・安全管理:1コース、メンテナンス関係:3コースの計21コースを開催しました。

 今年度の研修は、対面形式の研修となりましたが、オンライン研修で培われた研修インフラとノウハウを有効活用して、事前学習から研修中の情報伝達、そして研修後の事後学習までを統合的に設計して、研修の質を高めることができました。また、参加者同士の交流を促進するためにゲーミフィケーションやワークショップを活用した研修生参加型のプログラムについても昨年の状況を踏まえて改善を重ね、参加者の満足度を更に向上させることが出来ました。

さらに3D VR(仮想現場の疑似体験)教材の進化、AIプラットフォームの導入等、先進のDX技術を活用して研修を高度化させることが出来ました。

 次に、中東や東南アジア産油国を対象としたカスタマイズドコースも相手国からの個別の要請に基づき実施しました。令和5年度受入は、サウジアラビア、UAE、カタール、オマーン、ベトナム等を対象に9コース(女性管理者向けコースを含む)、専門家派遣はカタール、クウェート、UAE、インドネシアを対象に実施しました。

この結果、直轄受入研修371名と企業協力受入研修153名を併せ、参加者524名を研修に受け入れました。

 直轄受入研修のコース別実績は、以下2.事業実績にある記事のとおりです。

尚、JCCPが設立された昭和56年(1981年)以来、受け入れた参加者は、令和5年度末時点で累積27,565名に達しました。

受入研修1 IT-8-23
石油産業の戦略マネジメント
-次世代リーダーのための‐

受入研修3 CPJ-5-23(カスタマイズド)
カーボンニュートラルの達成に向けた移行期における戦略と計画

受入研修2 TR-8-23
石油産業におけるプロジェクトマネジメント

受入研修4 CPO-8-23(専門家派遣)
ゼロカーボンコミュニティのための経済的手法と技術

 研究者交流事業は、産油・産ガス国と日本が相互に研究者の派遣と受入を行うことにより、将来、石油産業下流分野に活かされる先端技術開発に携わる研究者の育成を狙いとして実施しています。

 令和5年度は石油学会委託事業として、アラムコ研究開発センターとイラク石油省石油研究開発センターから、2つの大学の研究室にそれぞれ1名の研究者を受け入れました。

来日した研究者は、自らの研究テーマについて受入先の研究室にて1~2ヶ月程度研究を行い、JCCPにて成果報告会を行ったのちに修了証を授与されました。

 本年度は海外の研究機関に研究者を派遣することができませんでしたが、希望している研究機関もあることから、来年度は国内研究者の海外派遣を実現したいと考えております。

人材育成1 イラク石油省石油研究開発センターの研究者

人材育成2 アラムコ研究開発センターの研究者

2. 事業実績

技術協力事業

1. 事業報告

 産油・産ガス国の石油産業下流分野等が抱える技術的課題の解決を支援するため、基盤整備事業として、わが国の技術・ノウハウの移転および産油国と共同で技術開発等を実施しています。

 令和5年度は基盤整備事業として以下3段階に分け、事業課題の抽出(基礎調査事業)として1ケ国1件、事業の実現性の確認(支援化確認事業)として6ケ国8件、産油国側との共同プロジェクト(共同事業)として8ケ国14件を、それぞれの段階で妥当性を確認しながら実施しました。

 令和5年度は事業実施協定を2件締結し、現地にて調印式を実施しました。新たに協定を結んで開始した共同事業は「オマーンOQでの蒸気システム最適化プログラムのパイロット事業」、「バーコードラベルを用いたLPGボンベの流通管理能力の改善に関する共同事業(ベトナム)」の2件です。

 コロナ禍の収束を受けて、海外との往来を全面的に再開しており、製油所の課題解決を図るエンジニアによるワークショップを海外の製油所で5年ぶりに開催いたしました。

技術協力1 令和5年 (2023年) 8月
PV Gas, PV Gas LPG(ベトナム)
事業実施協定調印

技術協力2 令和5年 (2023年) 12月
製油所の課題解決に向けた事業でアラムコ
ラスタヌラ製油所でワークショップ実施

2. 事業実績

連携促進事業

1. 事業報告

連携促進事業は、各種国際会議、ネットワーク会議などを実施することにより、トップマネジメントとの直接的な対話を行い、情報交流、技術交流及び人的交流の促進強化を目的とする事業です。

 【国際シンポジウム】
  JCCP国際シンポジウムは、JCCPが設立以来毎年一回開催されており、産油・産ガス国の政府関係機関・国営石油会社などから大臣・次官クラスや経営者等の幹部またはエネルギーの専門家を招聘し、日本の石油関連企業幹部と共に講演を行っています。各リーダー同士による意見交換や情報共有を通じて、我が国の石油・天然ガス供給安定化に向け協力して取組むべき課題等を明らかにするほか、人的交流を通して産油・産ガス国との関係維持・強化の場となっています。

 議論のテーマは、毎年、石油・ガス産業を取り巻く環境や状況を鑑みて、その時々に適した内容にフォーカスしています。例えば、人口急増減による需給の変動、環境問題の深刻化、産油国における中核人材の自国民化、シェールオイル・シェールガス革命、原油価格の下落、地政学的問題、環境問題への更なる対応の必要性等、近年では、カーボンニュートラルに向けた持続可能エネルギー、DE& I、DX(デジタルトランスフォーメーション)、SX(サスティナビリティトランスフォーメーション)、AIや次世代のリーダーの育成などがテーマとなっています。

 2020年度と2021年度は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受け、国際シンポジウムはリモート形式で開催されました。この期間、直接的な対面が難しい状況でありながらも、オンライン上での議論や情報交流が継続されました。しかし、2023年には3年ぶりに対面式とリモート形式を組み合わせたハイブリッド形式での開催が実現しました。

この形式は、リモート参加者と対面参加者の両方に対応し、より多くの人々が参加しやすくなりました。そして、2023年度は、海外からの講演者と経済産業省や日本企業の方々が対面でビジネス交流を行う機会を提供するため、対面開催で実施しました。このような形で、国際的な情勢や参加者のニーズに合わせて柔軟に対応し、さらなる交流と協力の促進を図りながら継続しています。

 令和5年度は、第42回JCCP国際シンポジウムを令和6年 (2024年) 1月25日に海外講演者を招聘し、会場には関係会社・組織から270名ほどの参加者を受け入れ、完全な対面式で開催することができました。講演者は、"人・技術・国際協力による持続可能エネルギー社会の実現"のメインテーマのもと、12ケ国15名が各パネルにおいて、相互に協力しあう関係であることを再認識し、課題解決のための意見交換や情報共有が行われました。

 リーダーズパネル1ではメインテーマである「人・技術・国際協力による持続可能エネルギー社会の実現」について、政府関係者・国内外の石油会社とエネルギー専門家の間で政策的・経営の立場から議論されました。リーダーズパネル2では、「新たなニーズに応える経営と人材育成」のテーマで、人材育成と経営にフォーカスし、共通の課題であるAIの活用やDX人材の育成に向け、それぞれの取り組みが紹介されました。またリーダーズパネル3では、「炭素インテンシティ低減に向けた多様な技術と取り組み」のテーマで、各国の課題や具体的な技術開発の取り組みが紹介されるなど、各パネルで参加各国の最新情報や状況を把握することにより共通の課題が明らかになり、それぞれの政策や戦略を理解することができました。

詳細はこちらからご参照ください。

シンポ1 第42回JCCP国際シンポジウム

シンポ4 リーダーズパネル2

シンポ2 リーダーズパネル1

シンポ3 リーダーズパネル3

 【日本サウジアラビア合同シンポジウム(研究・技術)】
 令和5年(2023年)12月5、6日の両日にサウジアラビア国キングファハド石油鉱物資源大学ダーランテクノバレーにおいて、アラムコ、キングファハド石油鉱物資源大学、石油学会、JCCPの共催で、第32回日本サウジアラビア合同シンポジウム(研究・技術)を開催しました。「石油精製および石油化学技術」を統一テーマに革新的な触媒開発を副題として、基調講演1件の後、4セッション(「石油転換」、「AIおよび機械学習アプリケーション」、「石油化学」、「持続可能性」)の22件の講演(うち、日本からは現地講演4件、オンライン講演2件)と、若手研究者によるポスターセッション23件(うち、日本から1件)の発表が行われました。

 連日130名を超える方が会場参加して活発な質疑応答等が交わされました。

【日本クウェート合同シンポジウム(研究・技術)】
 令和6年(2024年)2月5、6日の両日にクウェート国クウェート国立科学研究所 石油研究センターにおいて、クウェート国立科学研究所、石油学会、JCCPの共催で、第21回日本クウェート合同シンポジウム(研究・技術)を開催しました。「石油精製産業の発展」の統一テーマのもと、「石油精製業界におけるグリーン・イニシアティブ」、「石油精製プロセスの高度化」、「メンテナンス性とプラント健全性」の3セッションにて、基調講演2件、全体19件の講演が行われました。日本からは4件の現地講演と1件のオンライン講演が行われました。

  参加者は120名を超え、活発な議論が行われました。在クウェート日本国大使館 森野泰成 特命全権大使には2日間に亘って日本側の講演にご臨席賜りました。

連携促進1 【日本サウジアラビア合同シンポジウム】

連携促進2 【日本サウジアラビア合同シンポジウム】

連携促進3 【日本クウェート合同シンポジウム】

連携促進4 【日本クウェート合同シンポジウム】

 【FCWフォーラム】
 平成27年(2015年)、UAEと日本の石油関連業界の女性活躍推進と女性のキャリア開発を目的にFCW委員会 (Friendship Committee for Women Career Development) が設立されました。フォーラムはこの活動の一つとして、毎年情報交換の場として開催されています

 令和5年度は10月18日(水)、第17回FCWフォーラムを東京で開催いたしました。「持続可能エネルギー産業における私たちの役割-多様性・イノベーション・価値共創」をメインテーマとして、対面式にて開催し120名ほどの参加がありました。

 フォーラムでは、理事会メンバーであるUAE国務大臣H.E.Dr. Maitha AlShamsiご列席の下、ADNOC Offshore, CEO Ms. Tayba Al Hashimiによるリーダースピーチ、株式会社YeeY Co-Founder and CEO 島田由香様によるインスパイヤリング・トークが行なわれ、女性リーダーに必要な実行性や在り方についてのアドバイスなどをお話いただきました

 ワークショップ発表は、「カーボンニュートラル実現に向けた私たちの役割」をテーマに、FCW協力日本企業と、UAE、サウジアラビア、オマーン、カタール、インドネシア(初参加)の各石油会社からの参加者が、3つのテーマ「技術の活用/人材の育成/社会とのコミュニケーション」に分かれて、各グループ発表を行い、カーボンニュートラルに向けた革新的な先端技術開発やエネルギー産業のD&Iを統合することなどについて提言を行いました

 パネルディスカッションは、パネル1「ダイバーシティが促進するイノベーション」とパネル2「カーボンニュートラルの実現に向けた価値共創」を実施しました。パネル1では、島田CEOをモデレーターとし、経済産業省、日本、UAE、インドネシアの石油関連業界のリーダーが登壇し、ダイバーシティがイノベーションを起こしてどのように機能し、エネルギー産業の未来にどのような影響を与えるかを考察しました。パネル2では、早稲田大学の所教授をモデレーターとし、カーボンニュートラル達成のために、異なるステークホルダー間での価値共創に焦点を当て、企業、政府、個人などの異なる立場や関係者が協力し、目標達成のためにどのように連携し価値を共有しあうかについて議論しました。

2. 事業実績

海外事務所から

 JCCPでは、サウジアラビアのアル・コバールとUAEのアブダビに海外事務所を配置しています。(アル・コバール事務所、中東事務所)

 各事務所の中東担当国は、アル・コバール事務所がサウジアラビア・クウェート・イラク・バーレーン、中東事務所がUAE・カタール・オマーン・イランです。

 海外事務所の主な業務としては、上記担当国における各事業をスムーズにかつ安全に実施すべく、現地での各種支援、情報収集などを行っています。

 また、JCCP設立以来、中東産油・産ガス国の国営石油・ガス会社等と、人材育成事業、技術協力事業、及び連携促進事業を通して築いてきたネットワークを生かし、中東産油・産ガス国の石油・ガスダウンストリームに於いて日系企業・団体の事業展開の支援を行っています。

海外事務所1 アル・コバール事務所
(第32回日本サウジアラビア合同シンポジウム)

海外事務所2 中東事務所