JCCP 一般財団法人 JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関

2021年度事業総括

 令和3年度は、JCCP設立40周年となる記念の年でありましたが、足掛け3年に亘る新型コロナ感染症の影響により、前年度から引き続いて年度初から全ての研修コースをオンラインで実施するとともに、オンライン研修に対応すべく教室の改造や必要な機材等の整備、オンラインに適したカリキュラム構成やプレゼンテーションの工夫等も追求しました。

 一方、令和3年(2021年)は日本・クウェート国交樹立60周年ということで、JCCPでもオンラインによる記念のシンポジウムを開催し日本・クウェート間の友好の更なる深化に繋げました。また、産油国との技術協力事業においても往来が制限される中において各国からの要請に応えるべく努力し、日本のプレゼンスを高めることが出来ました。

 今回で40回目を迎えた国際シンポジウムは、リアル参加とライブ配信のハイブリッド形式で開催され、シンポジウムの冒頭にはJCCPの40年間の歩みを振り返ったビデオを上映するとともに、節目となるシンポジウムに相応しい多くのパネリストをお招きして注目のテーマについて活発で有意義な意見交換が行われました。

 また「女性のキャリア開発に向けた友好委員会(FCW)」では、初めて日本、UAE両国において働く女性の意識調査を実施し、課題解決に向けた議論が行われました。

 各事業の詳細は以下の通りです。

人材育成事業

1. 事業報告

令和2年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、従来の日本への渡航を伴う対面形式の研修コースの開催は困難であったことから、令和3年度に計画していたすべての直轄研修コースはオンライン形式で開催しました。 直轄受入研修では、レギュラーコースとして、戦略マネジメント・ビジネスプランニング関連:4コース、 人材関連:2コース、 DX・計装制御関連:3コース、 製油所設備・LNG利用技術:3コース、 石油物流関係:2コース、 環境・安全管理:2コース、 メンテナンス関係:4コースに、プロジェクトマネジメント関連:2コースを加えた計22コースを開催しました。なお、上記には主要産油国側のニーズを掘り起こすべく、製油所でのDX(Digital Transformation)の推進やシステム構築に関するプロジェクトマネジメントのコースを1コースずつ新設しており、参加者から好評を得ました。

今年度はオンライン形式の研修を開催して2年目となり、研修実施方法等において研修効率を向上させるための工夫を講じ実施しました。具体的には、オンライン形式の研修において不足しがちなレクチャラーと参加者との

双方向交流や、参加者同士の交流を促進するためにゲームやワークショップを活用した研修生参加型のプログラムを導入し、参加者の満足度を更に向上することが出来ました。また、3D VR(仮想現場の疑似体験)教材の活用により、参加者ニーズの高い現場視察の要素も取り込むことが出来ました。

次に、中東、東南アジア産油国を対象としたカスタマイズドコースも相手国からの個別の要請に基づき実施しました。令和3年度は、サウジアラビア、UAE、ベトナム、ミャンマー、フィリピン、インドネシア等を対象に10コース(女性管理者向けコースを含む)を対象に実施しました。この結果、直轄受入研修476名と企業協力研修71名を併せ、参加者547名をオンライン形式の研修に受け入れました。

直轄受入研修のコース別実績は、以下2.事業実績にある記事のとおりである。

尚、JCCPが設立された1981年以来、受け入れた参加者は令和3年度末時点で累積26,452名に達しました。

 研究者交流事業は、産油・産ガス国と日本が相互に研究者の派遣と受入を行うことにより、将来、石油産業下流分野に活かされる先端技術開発に携わる研究者の育成を狙いとして実施しています。

 令和3年度は石油学会委託事業として、イラク石油省石油研究開発センター とクウェート科学研究所 )から、それぞれ1名を大学の研究室と国内研究機関に受け入れました。コロナ禍の影響から来日が困難となったことから、オンライン方式にて受入を実施しました。イラクからの受入は11月~2月の間に、1回/月のオンライン指導を行いました。一方、クウェートからの受入は、希望するテーマと

国内研究機関のマッチングを行いましたが、クウェート側の研究優先度が途中で変わったため、1回の先進的な技術紹介を実施しました。

なお、コロナ禍の影響により、日本から相手国への研究者派遣については海外研究機関からの要請が見送られたため、令和3年度の研究者の海外派遣は実施出来ませんでした。それに代わる試みとして、イラク石油開発センターから2名、日本の大学院生4名参加する若手研究者によるオンライン方式のワークショップを開催し、各自の研究テーマの発表と質疑応答を行い、研究者間の相互交流を深めました。

人材育成1 オンライン研修

人材育成2 研究者交流事業-報告会

2. 事業実績

技術協力事業

1. 事業報告

産油・産ガス国の石油産業下流分野等が抱える技術的課題の解決を支援するため、基盤整備事業として、わが国の技術・ノウハウの移転および産油国と共同で技術開発等を実施しています。令和3年度は基盤整備事業として以下3段階に分け、事業課題の抽出(基礎調査事業)として2か国2件、事業の実現性の確認(支援化確認事業)として7か国12件、産油国側との共同プロジェクト(共同事業)として9か国19件を、それぞれの段階で妥当性を確認しながら実施しました。

 令和3年度事業の特記としては、事業実施協定を2件締結し、いずれも新型コロナウイルス感染拡大を踏まえてオンラインでの調印式を実施しました。新たに開始した共同事業は「製油所競争力強化に関する共同事業フェーズ2(ベトナム)」と「石油製品物流システムの効率化に関する共同事業フェーズ3(ベトナム)」の2件です。

 なお、コロナ禍の影響をうけ、予定していた多くの海外出張および技術者の招へいは実施できませんでした。そうしたなかで、コロナ感染状況と安全に十分留意して、3つの事業では現地渡航による状況視察や調査を行い、調査結果を海外カウンターパートと共有して、今後の進め方を議論するなどの協議を対面で実施することができました。

 また、令和2年度の経験を活かして、web会議システムを活用した対話の継続、電子的に受領した現地操業データに基づく運転改善提案、輸入による現地試料の国内での実験や分析による検討、代替品による検討、操作指導用のビデオ製作、オンラインでの技術紹介など、対面での議論が困難ななか、さまざまな工夫をこらしてリモートにて事業の推進に努めました。

技術協力1 オンラインでの技術紹介
マイクロドローン(10数センチ)による検査の状況

技術協力2 LPGボンベ製造の工程管理ビデオ

2. 事業実績

連携促進事業

1. 事業報告

連携促進事業は、各種国際会議の開催、ネットワーク会議などを実施することにより、情報交流、技術交流及び人的交流の促進強化目的とする事業です。

【国際シンポジウム】JCCP国際シンポジウムは、JCCPが設立以来毎年一回開催されており、産油・産ガス国の政府関係機関・国営石油会社などから大臣・次官クラスや経営者等の幹部またはエネルギーの専門家を招へいし、日本の石油関係企業幹部とともに講演を行っています。各リーダー同士による意見交換や情報共有を通じて、我が国の石油・天然ガス供給安定化に向け協力して取組むべき課題等を明らかにするほか人的交流を通して産油・産ガス国との関係維持・強化となっています。

令和3年度は、第40回JCCP国際シンポジウムを2022年(令和4年)1月27日にハイブリッド形式で実施し、国内外から600名を超える参加がありました。また、今回のシンポジウムではJCCPの設立40周年を記念して、開会式ではJCCPの歴史を映像で振り返り、さらに講演者数を11カ国19名に増やしたことにより、各パネルにおいて、より充実した意見交換が行われました。

リーダーズパネル1ではメインテーマである「持続可能な未来を実現するための石油ガス産業」について、政府関係者、国内外の石油会社とエネルギー専門家の間で政策的・経営の立場から議論され、リーダーズパネル2では、「SDGs達成に向けた経営・人材戦略」のテーマで、人材育成と経営にフォーカスし、共通の課題であるSDGs達成に向け、それぞれの施策が紹介されました。またリーダーズパネル3では、「エネルギートランジション - 技術による未来への挑戦」のテーマで、各国の課題や具体的な技術開発の取り組みが紹介されるなど各パネルで参加各国の最新情報や状況を把握することにより共通の課題が明らかになり、それぞれの政策や戦略を理解することができました。

【UAE-日本合同調査】ADNOC-JCCP間におけるFCW*活動の一環として、石油・ガス関連業界における「働く女性に関する意識・実態」と「コロナ禍が及ぼした家庭と仕事への影響」について、両国間で合同調査を実施しました。日本からはFCW活動の企画・執行委員会メンバーの所属する企業7社の協力を得て多数のアンケート回答をいただきました。

その分析報告は、両国の大学教授からなる調査チームが次年度に学術的考察を行い、公表される予定です。また、石油・ガス関連業界の採用や人材育成に資するべく、理系学生を対象に石油・ガス関連業界への関心や女性活躍推進に関する意識調査を行いました。

*Friendship Committee for Women Career Development
女性のキャリア開発に向けた友好委員会

その他、テーマ別合同シンポジウムは、各国・各機関からの要請を受けて相手国あるいは日本で共同開催し、日本の先進技術や研究成果等を広く内外に知らしめるとともに、相手国との情報の交流を行うものです。その結果として、相手国と日本との間での新たなコラボレーションが行われる契機にもなっています。

【FCWフォーラム】 2015年、UAEと日本の女性のキャリア開発を目的にFCW委員会 (Friendship Committee for Women Career Development)が設立されました。フォーラムはこの活動の一つとして、毎年、情報交換の場として開催されております。2021年度は、第13回目となるFCWフォーラムを昨年と同様にオンライン形式で実施しました。インスパイアリングスピーチでは、ユニリーバ・ジャパンHD人事総務本部長の島田氏が、転換期を迎えている石油・ガス産業で不安や悩みを抱えながら活躍している女性たちに向け、未来についての考え方や行動について講演いただきました。 また、中東の石油関連企業で働く女性管理職を対象にしたリーダーシップ研修*に参加したUAE・サウジアラビア・オマーンからの10名の研修生と日本の石油関連会社及びエンジニアリング会社の女性社員8名は、将来の石油産業の仕事を構想し、「組織の活性化」と「個人の成長」について、ワークショップで討議した内容や提案を発表しました。さらに、人事・ダイバーシティ推進の専門家間でパネルセッションが行われ、メインテーマの「石油・ガス産業の未来 -D&I 経営、私たちのキャリアプラン」について、意見交換が行われました。

*女性管理職向けマネジメントとリーダーシップ研修(CPJ-5-21)

【日本サウジアラビア合同シンポジウム(研究・技術)】第30回の日本サウジアラビア合同シンポジウム(研究・技術)「石油精製と石油化学の技術ー循環型炭素社会に向けた革新」をテーマとし(サウジアラムコ、キングファハド石油鉱物資源大学、石油学会、JCCPの共催)、令和3年12月13,14日にオンライン方式で開催しました。基調講演2講演、一般講演18講演(うち日本側から7講演)と、若手研究者によるポスターセッション10件(うち日本から2件)の発表がありました。当日は150名を超える方が視聴するイベントとなりました。

【日本クウェート合同シンポジウム(研究・技術)】第20回の日本クウェート合同シンポジウム(研究・技術)「石油精製産業の高度化」をテーマとし(クウェート国営石油精製会社、クウェート科学研究所、石油学会、JCCPの共催)、令和4年2月7,8日にオンライン方式で開催しました。基調講演2講演、一般公演20講演(うち日本側から6講演)と、若手研究者によるポスターセッション8件(うち日本から1件)の発表がありました。当日は100名を超える方が視聴するイベントとなりました。また、20回開催を記念して、祝賀ビデオメッセージの上映と合同シンポジウムのスライドショーを行いました。

連携促進1 第40回JCCP国際シンポジウム

連携促進2 日本サウジアラビア合同シンポジウム

連携促進3 第40回JCCP国際シンポジウム

連携促進4 第13回FCWフォーラム

2. 事業実績

海外事務所から

 JCCPでは、サウジアラビア国のアル・コバールとUAE国のアブダビに海外事務所(アル・コバール事務所、中東事務所)を配置しています。各事業所の中東担当国は、アル・コバール事務所がサウジアラビア・クウェート・イラク・バーレーン、中東事務所がUAE・カタール・オマーン・イランとなっています。

 海外事務所の主な業務としては、上記担当国における各事業をスムーズにかつ安全に実施すべく、現地での各種支援、情報収集などを行っています。また、JCCP設立以来、

中東産油国の国営石油会社等と、人材育成及び技術協力事業、連携促進事業を通して築いてきたネットワークを生かし、中東産油国の石油ダウンストリームに於いて日系企業の事業展開の支援を行っております。

令和3年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により遮断となっていた中東産油国の各国営石油会社の外部との面談が徐々に再開されたため、オンライン利用による事業実施サポートに加えて、現地におけるワークショップなど日本からの出張者実施行事のサポート活動を行いました。

海外事務所1 アルコバール事務所
(現地ワークショップのサポート)

海外事務所2 中東事務所